――まるで空を翔んでいるみたいだ。
絶対怖くないわけない状況なのに、不思議と安心できるのは、私を包む腕と手のひらのおかげだろうか。
紫月の銀の髪と金の瞳が、月光を浴びてきらめいている。
……彼はヴァンパイアの王様。
それをどうしようもないくらい理解するほどに、満月を背負う紫月が綺麗だった。
――私は、紫月が好き。
本当は、とっくに自分の気持ちに気づいてた。
でもそれはきっと、誰一人として許してくれない。
私が暁家の娘で、紫月がヴァンパイアの王である限り。
……それでも。
それでもきっと、紫月と一緒なら何があっても大丈夫――なんて、夢みたいなことを思ってしまったんだ。