きみのためならヴァンパイア




「これだけ、渡しとくよ」


水瀬が差し出したのは、銀のピストルだった。


「え……」

「自覚って、大切だと思うな。いろんな意味でね」


ハンターとしての自覚? ヴァンパイアの街で暮らすことへの自覚?

……それとも、ヴァンパイアの王様と一緒にいることへの自覚?

水瀬がどこまで知ってるかはわからない。

けど、私が思いつくことすべて、水瀬は知っている気がしてしまう。


「私は、こんなのいらない」

「ダメ。帰らないなら絶対に持っててもらう。僕は陽奈ちゃんを心配してるんだよ」


水瀬は私の手にピストルを握らせる。

立ち上がって帰ろうとする水瀬を、思わず引きとめた。


「待って!」


私の言葉を待つ水瀬は、どこかうれしそうに見える。


「……どうして水瀬は、ヴァンパイアのこと、嫌いなの」


基本的に、ヴァンパイアは人にとって嫌われものだ。

それは当然だと思う。吸血依存症がある以上、仕方ない。


けど、水瀬に関しては少し異常にも思える。


それに私は、紫月と一緒にいることで、すべてのヴァンパイアが怖いわけじゃないと知った。

だから、水瀬はどうしてそんなに嫌うのか、少しだけ気になってしまった。


「ふふ、どうしてって? 面白いこと聞くね。ヴァンパイアが嫌いなんて、当たり前のことだよ」

「そうだけど……」

「ねえ、ヴァンパイアと僕の秘密、教えてあげようか」


両手で頬を掴まれて、無理やり目を合わせられる。