きみのためならヴァンパイア




私が返事をする前に、ドアが開かれる。


「はいはい、点滴交換しま……あらっ!? 起きたの!?」


病室に入ってきたのは、看護士さんだった。


「あ……さっき、起きました。お世話になってます……」

「……俺、席外す」


紫月は看護士さんにお願いしますと言って、病室を出て行ってしまった。


「元気そうでよかったわぁ。ちょっと、傷を確認しますね~」


看護士さんに服をめくられながら、紫月が気を遣ってくれたんだと気づく。


「うん、化膿も大丈夫そうですね」

「ありがとうございます……あの、さっきの、彼、ずっとここにいたんですか?」

「あーそうねぇ、ずっといましたよ。優しいフィアンセさんね!」


ん? ……フィアンセ?

フィアンセって、婚約者だよね?


「フィアンセって……」

「彼から聞いちゃったわよ。若いのに素敵ねぇ」


……紫月、また嘘ついたんだ……。

彼女、イトコ、それから婚約者。

ごまかすためなら言いたい放題だ。


看護士さんに点滴を換えてもらっていると、また病室のドアがノックされた。


「はーい?」


私に代わり看護士さんが返事をすると、ドアから覗いたのはまた別の若い看護士さん。


「なんか婚約者って方がお見舞いに来ましたけど……」

「ああ、入って大丈夫ですよ。ね?」

「はい……」


紫月、どうしてわざわざ別の看護士さんと来たんだろう。

疑問を抱いたまま、彼が入ってくるのを待つ。


「やぁ、久しぶり」


――その爽やかな声に、耳を疑った。


「なっ……なんで、あなたが……」