きみのためならヴァンパイア




――樹莉ちゃんが叫んだその瞬間。

私を襲ったのは、鈍い痛みだった。


何が起こったかすぐに理解できず、自然と荒くなる呼吸を必死に整える。

下を見ると、私のお腹にナイフが突き刺さっていた。


「あっははははは! やったね! 大当たり~」

「――陽奈っ!」


多分、樹莉ちゃんは自由な左手でどこからかナイフを取り出して、私めがけて投げたんだろうと思う。

けどもう、それ以上脳が回らない。

出血がちょっと、ひどいかも。


あれ? これ、私、ダメなやつ?

なんだか頭が重くて、意識を保っていられなさそう。


「樹莉! てめえは二度と陽奈に近づくな!」


紫月が、樹莉ちゃんの口に自分の手を突っ込みながら言っていた。

あー、王様の血ね。

飲ませさえすれば、カプセルでも生でも何でもいいんだ。


樹莉ちゃんは紫月の血で真っ赤に染まった口角をいびつに上げている。

泣きながら笑う樹莉ちゃんは、なんか、とにかく、すごく悲しそうに見えた。


「陽奈……っ」


紫月は私を抱き上げて、見たことないような表情をしてる。

心配そうに私のことを見てるけど、自分だって大変なくせに。

けど私はもう上手に声も出なくって、ただ痛みに耐えるのがやっとだ。


「待ってろ、今――」


薄れゆく意識の中で聞いたのは、その優しい声が最後だった。