――あれからずっと、樹莉ちゃんの言葉が、心にトゲのように刺さって抜けない。


今、紫月と暮らす日々は、楽しいと思う。

でも、ふいに無力感に襲われる。


私はあの日、銀の弾丸がヴァンパイアの記憶を消してしまうことを知った。

それから、ヴァンパイアハンターがやっていることは正しいとは思えなくなった。

……それを、家族に伝えなくてもいいのかな。


私は家を出て、家族と向き合うことから逃げた。

それで今は成り行きで、前よりもずっと幸せな暮らしを手に入れた。


……でも、本当に私、それでいい?

せっかくヴァンパイアのことを知ったのに。

せっかくハンターの一族に産まれたのに。

なんにもしないのって、なんか――


「……かっこわるい……」

「は?」


思わず漏れた心の声が、紫月に聞こえてしまったようだ。


「急にケンカ売ってる?」

「ち、ちがっ――紫月のことじゃなくて!」


彼は店の掃除をしていた手を止めて、私に迫ってきた。


「じゃ、何の話だよ。お前が最近なんか悩んでることか?」

「いや、別に……」

「嘘だな。前にハンターを見かけたときから、ずっとおかしい」


さすが、私のことなんてお見通しだ。


「……だって私、ハンターがそんなひどいことしてるなんて――」


私が言いかけたときだった。