「うん、よかったよ」
「ふっ、即答かよ。あんな目にあって、こんなところにいるのに?」
「うん」
「変な奴」
はじめはどうなることかと思ったけど……いやそれはまだちょっと思ってるけど。
後悔なんて気持ち、今は少しもない。
助けてもらって、お風呂もあって、少なくたって食事もある。
どうにでもなれと家を出た身からすれば、充分すぎる。
いつの間にか、二人ぶんのお皿は空になっていた。
「ごはん、どうだった?」
「まあまあだな」
「……これからもっと、がんばります」
「これからも作ってくれんの」
「作っていいなら……」
間宵紫月が許すなら、私はもうちょっとだけでもここにいたい。
だからその間に、少しでも恩返しができるといいなと思う。
「好きにしていいけど、デザートもあるよな?」
「で、でも、さっき吸ったばっかりじゃ……」
「いくらあってもいいんだよ」
そう言うと間宵紫月は私を荷物のようにひょいとかつぐ。
「ちょ、ちょちょちょっと!」
それから彼がドアを開けた先には、ベッドがあった。
「なっ、何するつもりなの!?」
「吸うんだけど」
「吸うだけなら別にどこでも――」
「ソファじゃ狭い」
「だって、さっきはソファで」
「手加減したからな。もう手加減しねぇけど、耐えられる自信ある?」
手加減なしって、一体どういうことなんだろう。
貧血になる? 痛い? それとも――もっと、気持ちいい?
自分の中にそんな疑問がわいたことすら恥ずかしくて、言葉を失う。
「即答できないなら、ここでする。無理なら無理って言えよ?」



