きみのためならヴァンパイア




私は、紙の束をビリビリと細かく破いた。

分厚い束だったのに、少しの力で易々(やすやす)と破くことができる。

些細(ささい)なことだけど、ヴァンパイアの力の強さを実感した。


ーーふいに、強い風が吹く。


必死になって止める叔父の言葉も聞かずに、私は紙の破片を手放した。

宙に舞う破片は、まるで紙吹雪のよう。

最中(さなか)、足元にあった小石を拾い、叔父に向かって勢いよく投げる。

紙吹雪で視界がくらんだのだろう、叔父は額に小石が直撃するまで私の攻撃に気づかずに、後ろに倒れて気を失ってしまった。


……これはちょっとやりすぎたかな。

けれどもう、外はすぐそこだ。

暁家から銀の弾丸の製法を奪うという目的は果たせた。


ーーこれでやっと、紫月に会いに行ける。

私はおもむろに月を見上げて、塀を飛び越えるための助走のぶん、塀から距離を取る。


「陽奈」


そのとき背後から聞こえたのは、父親の声だった。