きみのためならヴァンパイア




外に向かって、走る。

すると騒ぎを聞きつけたのか、廊下で叔母と弟が待ちかまえていた。


「待ちなさい!」


二人とも木刀を持ち、私を狙っている。

叔母の一振りをかわした瞬間、弟が突くように素早く振るった木刀の切っ先が目前に迫る。

しかしそれは、指先で簡単に払うことができた。

弟は、以前の私では考えられない動きに動揺したのか、目を見開いた。

それから、悔しそうに顔を歪める。


……弟は、姉である私が自分より劣っていて、ある意味安心していたはずだ。

ーー暁家を継ぐのは自分だ、と。

もちろん私は家を継ぐ気なんてさらさらないが、単純な力の優劣さえも私に負けたくなかったのだろう。


弟は悪あがきのごとく、水瀬が使っていたような小さなナイフを取り出し、私に向かって投げた。

ナイフは真っ直ぐ飛び、一直線に私を狙う。

避けるのは難しく、致命傷になるかもしれないと思う。


……私が、ヴァンパイアじゃなければ。


私は虫を叩くように両手でナイフを掴み、弟と叔母の間を狙って投げ返した。

軌道上にあった二人の髪が、少しずつ切れて舞う。


「……ごめんね、私もう、弱くないんだ」


私は呆然とする二人を背に、庭へ向かって走り出した。