◆
ーーあれから、何日が経っただろう。
父親は従順になった私を見て、満足そうに言った。
「ようやく、ハンターとしての自覚が芽生えたな」
……違うよ、そんな自覚ないよ。
ただ、自分の頭で考えるのがいやになっただけ。
そんな本心を口に出すこともなく、私はただゆっくりと頷いた。
日中は心を殺して家族と共に過ごしているが、夜になって自室にこもっていると、紫月のことを思い出さずにはいられない。
枕元に置いた小さなランプが、ぼんやりと部屋を照らす。
私は紫月と離れてから、また暗いところが苦手になってしまった。
……紫月は、今、どうしてるかな?
またひとりぼっちで、寂しい思いをしてるかな。
目覚めたら人間になってて、ヴァンパイアだったこともわからなくて、私のことも忘れちゃったよね。
「会いたいよ……」
ーー何度も、家を抜け出して紫月を探しに行こうと思った。
けれど、家族がずっと私を監視している。
前の家出のときは私に大した興味もなかったくせに、今となったら、私がまた家を出たりすれば裏切り者として罰するつもりなのだろう。
布団に入るも、紫月と過ごした日々の記憶がぐるぐると脳内を巡り、とても眠れそうにない。
外の空気を吸いに、縁側に出て窓を開ける。
そこで私は、紫月のことをよりいっそう思い起こしてしまうことになった。