少しの間、ただ寄り添って過ごした。

離れていたのはほんの少しの時間だったけど、その分を取り戻すように。


「……紫月、あのねーー」


そうしているうちに決心がついて、私は、自分の家のことを正直に話した。

紫月は、私が暁家の娘だということを、名前を知ったときから確信していたらしい。


「……それなら、どうして私のこと助けてくれたの? ほら、スパイとか、そういうのかもしれないのに」

「スパイなんかできるほど器用か? お前。そんなんじゃねぇって見ればわかるよ」


けなされてるんだか褒められてるんだかわからない。


「……お前を助けたのは、あのヴァンパイアが気に入らなかっただけ。で、もう正直に言うけど。お前を拾ったのは、ちょっといじめてやろうと思ったからだ」

「いっ……いじめ? 稀血だからとかじゃなくて?」


本気で言ってるんだとしたら、紫月にいじめられるなんて想像するのも恐ろしい。

けど、紫月がそんなことをするとは到底思えないのも事実だ。


「……俺はヴァンパイアだ。前も言ったけど、ハンターは嫌いなんだよ。それに稀血なんてどうでもいい」


紫月は、はじめから私をエサとして見てはいなかったんだ。


「……でも、私のことおいしそうとか言ってた」

「……だから、いじめてやろうと思ってたんだって。悪かったよ」