噛みつかれるのはいつものことで、首筋に触れられるとわかっているから、目をつぶって身構える。
けれど触れられたのを感じたのは、唇だった。
驚いてまぶたを開くと、紫月の瞳が目前にある。
ーーキス、されてる?
突然のことで、気を抜けばパニックになりそうだ。
噛みつかれたことなら何度もあるし、それはキス以上に勇気がいることのような気がしていた。
でも、されてみれば。
キスの方がよっぽど、ドキドキする。
顔が紅潮していくのが自分でもわかる。
うれしいんだか恥ずかしいんだか、自分でもよくわからなくなってきて、思わず、逃げた。
「っは、し、紫月……んっ」
離れられたのは息継ぎ程度の時間だった。
またすぐに唇を重ねられて、今度は私もそれを受け入れた。
もう逃がさないとでも言うように、紫月は私の頬に手を添える。
ーー私たちがキスしていた時間が短かったのか長かったのか、よくわからない。
けど、確かに私は幸せだった。
こんな時間がずっと続いてほしいと願ってやまない。
そうして私は、もう他のことなんてどうでもよくなって、これからのことなんて考えもせずに。
言わないと決めた気持ちを、言葉に変えてこぼしてしまう。
「……紫月のことが、好き」



