「そんな、私こそ、ごめん……ほんとに、色々。紫月が謝ることなんて何もないよ」
「あるだろ、山ほど」
「なっ、ないよ! それは私の方だよ!」
「俺だって」
「私が悪いんだって!」
……また、沈黙。
このままじゃ埒が明かない。
「あのさーー」
とにかく何か話そうと、私が身を乗り出したとき。
紫月は、私の顎を指先で持ち上げた。
こんなに真正面から、真剣な瞳を見るのは初めてだった。
金色の瞳は、見れば見るほど引き込まれて、視線を逸らすなんてできなくなる。
「噛みついて、いい?」
「なっ、に、それ」
「言葉通りだけど」
「な、なんで、今ーーて、いうか、なんでわざわざ聞いて……」
いつもだったら、勝手にやるくせに。
私は紫月の言いなり。それが紫月と私の契約だから。
「訊くだろ。契約は、もう無しだからな。俺が破ったから」
「……どういうこと?」
「お前を誰にも襲わせないって言った。……けど、守れなかっただろ」
……確かに、そんな契約だったっけ。
でも、それじゃあ私と紫月の関係はどうなるんだろう。
「で、噛みついていいのかよ」
「……私に拒否権あるってこと?」
「そうだったら拒否するか?」
「……いじわる」
口角を上げる紫月の顔を、久々に見た気がする。
「いただきます」



