「何とでも言えよ」
残酷だって、紫月は自分でも言っていた。
記憶を消してしまうというのは、確かにひどいことかもしれない。
私に樹莉ちゃんの過去のことはわからない。
けれど記憶を消すことで盲目的な執着をやめられるのなら、それで健全な未来を見ることができるようになるのなら、残酷だとは言い切れないとも思う。
「で、陸……てめーは好き勝手に人を襲おうと思うのをやめろ」
「……え、なになに? 俺の記憶は消さなくていーの?」
陸君は意外そうに、目をぱちくりさせる。
「そもそもお前は自由に血を飲みたいだけだろ、だからその考えを改めろって言ったんだ」
「そりゃそーだけど……回りくどいっていうか、もっとはっきり言えばいいじゃん。それこそ記憶消すのが早いよね?」
「うるせぇな、俺には無駄に他人を支配するような趣味はないんだよ」
「へぇ、優しい王様で助かったよ。ねぇ陽奈ちゃん?」
私は蚊帳の外だったのに、突然話しかけられて思わず肩が跳ねてしまった。
私が返事をする前に、紫月は私を隠すように前へ出る。
「二度と陽奈に話しかけんな」
「それ、無駄な支配じゃない?」
「……あと、もうひとつ」
「ん?」
紫月は陸君に近寄って、陸君の胸ぐらを掴んだ。
「え」



