きみのためならヴァンパイア




「俺は優しくなんかない。だからお前を死なせたりしない。……今から言うことが、残酷だってわかってるよ。だから最後に(・・・)俺に言いたいことがあるなら、聞いてやる」


樹莉ちゃんは発する言葉を選ぶように、口を小さく開いたり閉じたりを繰り返す。

それは、命乞いにも似ていた。

けれどそれを静かに見つめる紫月はもう、樹莉ちゃんが何を乞うたとしても受け入れる気はないだろう。

きっと樹莉ちゃんにも、それは伝わっているはずだ。

だから樹莉ちゃんは、もう足掻こうとしなかった。


「ーーっ、紫月、大好き……」


樹莉ちゃんの目のふちに溜まった涙が、言葉と共に一粒こぼれる。


「……嘘つけ。ーー樹莉、俺と陽奈のことは忘れろ」


紫月の言葉と視線の端にちらつくのは、(さげす)みに混じった哀れみ。

それはきっと、紫月から樹莉ちゃんへの最後の贈り物だった。


紫月の言葉の後で、樹莉ちゃんはハッと目を見開き、それから辺りを見回した。


「……陸? 私、何してたっけ……?」

「……べつに、何も」


何も言わないのは、陸君の優しさなのだろうか。

それとも、もう関わりたくないとでも思ったのだろうか。


陸君は、紫月を見て、吐き捨てるように言う。


「……俺らの王様は、ずいぶん優しくて残酷なんだね」