きみのためならヴァンパイア




ため息まじりに言った陸君を、紫月は睨みつける。


「手錠の鍵、どこだ」

「……俺のネックレス」


もう計画やらを諦めたのか、陸君は抵抗する気力もないようだ。

紫月が陸君の首もとから、手錠の鍵がぶら下がったネックレスを引きちぎる。

そして、私の手を解放してくれた。

自由になった手で、今度は私から紫月を抱きしめる。


「ありがとう。ごめんね、紫月……」

「……大丈夫。とりあえず、こいつら片付けてからな」


無気力な陸君とは対照的に、樹莉ちゃんはわなわなと震えている。

樹莉ちゃんからは、怒りや嫉妬、悲しみーーとにかくネガティブな感情が入り交じった視線を感じる。


「なんで、その女なの」


紫月は樹莉ちゃんの質問に答えない。

ただ無言で歩み寄り、震える手からピストルを取りあげた。


「ーー紫月、わかってんの? その女は暁家の、跡取り娘なんだよ!?」

「っ、それはーー」


それは、私が自分の口から言うつもりだったのに。

今ここでそう言っても、嘘つき呼ばわりされるだけだ。

祈るような気持ちで紫月を見ると、紫月は私に一瞬だけ視線を送って、ぼそりと言った。


「……んなこと、知ってるよ」