きみのためならヴァンパイア




陸君は、すぐに違和感を察知したようだ。

私から離れようとした陸君の頭を、私はできる限りの力で押さえつける。

やがて陸君の喉がごくりと鳴ったのを確認してから、私は口を離して叫んだ。


「紫月! 命令して!」


次の一瞬で、私以外の全員が動いた。

陸君は私に掴みかかろうとし、樹莉ちゃんは銃口を私に向けようとした。

けれど一番早かったのは、紫月の言葉。


「ーー樹莉のヘッドフォンを取れ!」


陸君は紫月に従って、樹莉ちゃんからヘッドフォンを奪う。

樹莉ちゃんは戸惑った様子でありながらも、左手でヘッドフォンを取り返そうとし、右手の指先で引き金に触れた。


「動くな!」


紫月の一声が放たれた瞬間、陸君と樹莉ちゃんは凍りついたようにぴたりと止まる。


……私の作戦は、成功した。

陸君に紫月の血液入りのカプセルを飲ませることができた。

あのとき、こっそりカプセルをもらっておいてよかった。

紫月がすぐに状況を理解してくれたのも助かった。


これでとりあえずは、一安心のはずだ。

肩の力が抜けた……かと思うと、そのまま腰が抜けてしまう。

紫月が駆け寄り、私を抱きしめてくれた。


「悪かった、陽奈」

「わっ、私こそ、隠し事してて、ごめん……!」


紫月の体温に触れると、勝手に涙が溢れて止まらない。

理由は自分でもわからない。

けれど紫月の優しさもあたたかさも、今は私に向けられていることがうれしかった。


「……おーい、イチャつくのやめてもらえる?」