きみのためならヴァンパイア




陸君は、私の肩を抱く。

優しさなんて微塵(みじん)も感じない手のひらだ。

……私に何をするつもりなんだろう。

それで紫月が助かるなら何をされても受け入れるけど、そうじゃないなら意味がない。


「ーー陽奈から離れろ!」


紫月が足を踏み出した瞬間、樹莉ちゃんが紫月にピストルを向ける。


「動かないで! そこで止まっててくれないと、私、紫月を殺さない自信ないよ?」


樹莉ちゃんのヘッドフォンさえなければ、紫月の指示を聞いてもらえるのに。

何もできない自分が、つくづく嫌になる。

せめて手錠がどうにかならないかと手を闇雲に動かしてみるが、どうにもならない。

ふと、手がポケットに当たったとき、微かなふくらみを感じた。

……それで、私は思い出す。

形勢逆転のための一手があることを。


「ね、陽奈ちゃんは俺がもらうよ。結構、好みなんだよねー、顔」

「趣味、悪っ」


私に頬を寄せる陸君を樹莉ちゃんは苦い顔で見て、吐き捨てた。


紫月の視線と殺気が痛い。

けれど私は、陸君のことを拒まなかった。


「ーー陸君になら、何されても、いいよ」