きみのためならヴァンパイア




呆れたようにため息をつく陸君は、シャツの襟を引っ張りながら言った。

よく見ると、クリップマイクを着けている。

話しかける様子を見るに、アウトプット先は樹莉ちゃんのヘッドフォンなのだろう。


「どの口が言ってんのよ。陸、あんた紫月のこと殺すつもりだったでしょ?」

「仕方ないでしょー、どういうわけかわかんないけど、実弾だったんだから」

「仕方ないってーー樹莉との約束は!?」

「いや、だってさ、銀の弾丸無しでどうやってあいつを飼い慣らすんだよ」


陸君は、紫月を見る。

毒ともいえる日光を浴び、肩から血を流しながらも、美しく輝く金の瞳の鋭さは変わらない。

そんな紫月を『飼い慣らす』なんて、樹莉ちゃんは一体どういう約束をしたのだろう。


「……陸、てめー、樹莉と手ぇ組んでたのか」

「そうだけど? あんたに銀の弾丸ぶちこめば、俺は王様が消えてハッピー、樹莉は記憶失ったあんたを手に入れてハッピーってわけ」


……そんなことを考えていたなんて。

樹莉ちゃんは、紫月への恋心が過激なだけだと思っていた。

けれど、記憶を失わせてでも手に入れたいなんて、それは恋でもなんでもない。

ただ、紫月という名前を持つだけの人形があればいいんだ。


「余計なこと喋るな。陸、先にあんたを撃とうか?」

「はー、こわいこわい」


陸君を睨む樹莉ちゃんのことが、前よりも恐ろしく思えた。

それと同時に、不思議と哀れむような気持ちも覚える。

どうして樹莉ちゃんは、紫月のことをそんな風に想うまでになってしまったのだろう。