きみのためならヴァンパイア




二階の通路部分のカーテンが、何者かに開かれた。

それによって、部屋のほとんどが日光にさらされる。

紫月は腕で顔を覆い、よろけてしまった。


「しづ、」


心配で声をかけようとしたが、私の言葉に被せるように、なにかが陸君の方に飛んできた。


「ーーっ!?」


それが陸君の手元に当たって、ピストルは床に落ちる。

飛んできたのは、女性物のパンプスのようだ。

直後、フードを被った何者かが、滑り降りるように階段を下ってきた。

陸君が体勢を立て直すと同時くらいに、その何者かはピストルを拾い上げる。


「話が違うんじゃないの、陸」


振り向いたその人は、見知った顔だった。


「ーー樹莉ちゃん……!?」

「今、樹莉って言った? もう二度と樹莉の名前を呼べないようにしてあげようか?」


私にピストルを向ける樹莉ちゃんは、ヘッドフォンを着けている。


「樹莉、そのピストル持ってこい!」


紫月が叫ぶも、樹莉ちゃんは振り向きもしない。

……そうか、樹莉ちゃんは前に紫月の血を飲んでいる。

だから紫月の言いなりにならないために、外から声を通さないヘッドフォンを着けているんだ。


「……やめとけよ、樹莉」