きみのためならヴァンパイア




「だっ、ダメ!」


陸君は紫月に気を取られていたのか、私を拘束していた手をゆるめた。

その隙を見て、私は陸君に思い切り体当たりする。


けれど、陸君は少し体勢を崩しただけで、丸腰の私にはこれ以上止められそうにもなかった。

なにか辺りに武器になるようなものはないかと見回すも、そう都合よく見つからない。

焦る私の前に、陸君がゆらりと迫る。

陸君はいつの間にか、手錠を持っていた。


「……悪い子は捕まえちゃうよ?」


私の右手は、近くにあった鉄の柱に手錠で繋がれてしまった。


「陸君、お願いだからやめて……!」

「やーだ。……おとなしく見てなよ。王様が消えて、俺たちヴァンパイアが自由に近づく瞬間をさ」


陸君は改めて紫月の方に向き直り、ピストルを向けた。


「くっ、陸君! あの人たち、仲間なんじゃないの? 撃ったりしたら危ないよ!」

「……じゃあ、もっと近くで撃とうかな」


撃つのを止めたくて言った苦し紛れの指摘は、あっさりと論破されてしまう。


「でもなー、近づいて牙剥かれたら嫌だし。やっぱここから撃っちゃお。俺エイム上手いからだいじょーぶ。なー、みんな?」


紫月を拘束してる三人は、みんな頷いた。

陸君を信用しているんだ。


打つ手が浮かばない。

紫月が記憶をなくすなんて嫌だ。

一緒にいたのも忘れちゃうなんて嫌だ。


「やだよぉ……やめてよ……!」

「やめねーってば。ーーじゃーね、王様!」


ーーパァン!

広い空間に、銃声が鳴り響いた。