隣町のハンバーガーショップ。

店の様子を良く知る遥によれば、めったにウチの学校の生徒は来ないらしい。

だから4人で話すのは目立たない、バッチリのシチュエーションだという。

万が一、目撃されて指摘されても、
「学校帰り、4人でしゃべってましたが、何か?」 で通せる……と、思うって。

ということで、このハンバーガーショップで、待ち合わせをする事にした。

でもさすがに、4人一緒に連れだって、行くのは目立ちすぎる。

時間差で、下校し、別行動をする事となった。

放課後が楽しみで、私は少し気もそぞろ。

いか~ん!
授業中は、勉強に集中!

と気合を入れ直して、授業が終わり、

「さようならあ! 失礼しま~す!」

と元気にあいさつ。

私の学校の一日はあいさつに始まり、あいさつに終わる。
なんちゃんて。

ということで、まず私と遥が下校。

一緒に電車に乗り、ふたりで隣駅へ。

そして駅前の『お店』へイン!

私と遥はいっつもふたりだから全然問題ナッシング。

続いて颯真君が「お~い!」と片手を振って現れ、
最後に海斗君も「お待たせ!」と両手を大きく挙げ、
自分の存在をアピールしながら現れた。

これで遂に4人は全員集合。

わお!
何か、探偵ごっこみたいで、楽しかった。

ちなみに颯真君は、「今日は用事があるから、一緒には帰れない、失礼するね」と、
クラス女子達へ丁寧(ていねい)に断りを入れたそうだ。

ここで席替え。

私と颯真君。
遥と海斗君。
カップル同士で横に並び、向かい合う。

段取りは決まっていた。
最初は、初対面同士の挨拶。

最初に颯真君が、海斗君へあいさつ、そして自己紹介。

顔は互いに見知っていたけれど、こうやって面と向かい話すのは、初めてなのだ。

「初めまして、俺、岡林颯真(おかばやし・そうま)です」

対して、海斗君もあいさつと自己紹介。

「こちらこそ、初めまして。松山海斗(まつやま・かいと)です」

そして、私は颯真君へ合図。
ふたりで一緒に、遥と海斗君両方へ、改めてお礼を言うのだ。

遥と海斗君の熱いフォローなくしては、
私と颯真君はず~っと『すれ違いのまま』だったかもしれないから。

「遥、海斗君、いろいろと本当にありがとうございました!」
「遥ちゃん、海斗君! いろいろと本当にありがとうございました!」

対して、遥と海斗君は、

「凛! 颯真君! 良いよ、そんなにかしこまらないで」
「そうさ! 俺がいたらなくて、亮が無理やり押しかけて来るとか、凛ちゃんにも颯真君にも迷惑をかけたんだ!」

「何も言わないで! 私たちの感謝の気持ちを受けて!」
「そうだよ! 俺と凛ちゃんが、こうしてちゃんと付き合えるようになったのは、ふたりのおかげさ!」

と、こんな感じのやりとりとなった。

あらら、ちょっと声が大きくなったけれど……
幸い、私たちの周囲に、他のお客さんはほとんど居なかった。

だから、注目!
されずにすんだ……のである。

遥の見立て、このハンバーガーショップを選んだのは大当たりだった。

さてさて!
私と遥は親友だし、私と海斗君も遥経由で親しい友だち。

颯真君と海斗君が初対面だっただけ。

あいさつが終わると……

海斗君が改めて、相原さんの一件を謝罪した。

「この前は本当に申し訳なかった! 亮は、二度とあのような強引な真似はしないと誓った。凛ちゃんの気持ちは颯真君にある。『俺は身を退くよ』と約束してくれたよ」

経緯(けいい)を聞いているから、私も颯真君も怒ったりはしない。
そもそも、相原さんの『押しかけ』は、海斗君の責任ではないし。

「ちゃんと、亮とは約束したから大丈夫とは思うが、何かあったら、すぐ俺に言ってくれ。相談でもなんでも、気軽に連絡してくれ」

と海斗君は言った。

そして遥と私の了解を得て、海斗君と颯真君は連絡先の交換をした。

海斗君は、相原さんと話した際、
「私と颯真君の出会いを知っている」と相原さんから聞いた。

そして颯真君が私をかばい……
相原さんの誘いをきっぱり断った私が、嬉しそうにした事。

ダメもとでアタックしようとしたのだが、
それで相原さんは私の事を諦め、身を引いてくれたという。

「なぜ、お前が凛ちゃんと颯真君の『出会い』を知っているんだ?」

そう、海斗君が相原さんを問いただしたら、具体的な名前は言わなかったが、

「ウチのクラスメートから聞いた」と、言われたらしい。

「仕方ない。俺がクラス全員へオープンにしたから」

と、颯真君が言い、
私も、

「颯真君が話すのを、私がOKしたから!」

と、海斗君を(いた)わった。

そんな3人のやりとりを見て、遥はとても嬉しそうだった。

……面倒見の良い遥は勿論、律儀な海斗君の誠実さにも触れ、

すぐに4人は、昔から長年付き合って来た友だちのように仲良くなった。

話は『今後の事』へ進んで行く。
遥の立ててくれた進行スケジュールは、4人の間で共有されるのだ。

改めて、状況を確認しよう。

私と颯真君の出会いのエピソードは、クラスメートたちは知っている。

そして昨日、颯真君が相原さんの件で、私を守ったという事実。

その上で、私への気持ちを改めて、確かめたいと、
颯真君がデートに誘ったという事にする。

でも、私は奥手で颯真君と1対1でデートするのが大いに不安。
だから遥と海斗君を一緒に誘った……4人で会おうという事にする。

そして、何回か、4人でダブルデートをする。

デートだけじゃなく、学校でのランチも一緒に4人だけで一緒に行く

クラス女子の誘いは、颯真君にきっぱり断って貰う。

ここで、大体の女子は察して、分かる、理解する。

……という流れ。

遥と私が相談した提案は、おおむね4人全員が賛成でOKだった。

それから……4人で意見交換も。

まず私!
遥が作戦を考えてくれて大感謝!
 
だけど私自身の恋なんだから、いろいろ考え、アクションを起こしたい。

自分で積極的に行かなくちゃね!

やはり、最大の問題はクラスメートたちとの折り合いだ。

「じっくり考えたけれど、最初から、ず~っと、この4人の『べったり』じゃ、まずいと思う」

私は自分の意見を述べた上で、提案する。

「学校ではしばらく4人だけでのランチは避けた方が良いかもしれない。颯真君が、私と遥も誘ってくれて、海斗君も入り、クラスの女子達も一緒のランチをするのはどうかな?」

すると颯真君が、同意してくれる。

「俺も凛ちゃんの意見に賛成だ。彼女達と話していると、なんとなく俺と凛ちゃんの気持ちを察した子が多いんだよ。ほら、皆、俺と凛ちゃんの出会いのエピソードを知ってるし、昨日の相原さんとの件を見て、納得! ……って感じなんだ」

ここで、遥が「はい!」と手を挙げる。

「じゃあ、しばらくは、週末は4人でデートするという形にして、校内のランチはクラスの女子達と一緒にしない? どうせくっつき男子も来るし、海斗にも入って貰ってさ。颯真君が転入した際に話した通り、クラスの全員と仲良くしたいというポリシーは変えず、自然に凛と颯真君の初恋を実らせて行く……という形を試してみたら」

すると海斗君が、

「ああ、俺も遥に賛成だ。凛ちゃん、颯真君、女子達への説得は大変かもしれないが、その作戦に乗ってみないか? 俺も大いに協力するよ」

と笑顔で話してくれた。

私と颯真君に異存はない。
見つめ合い、頷き合って、

「「ありがとうございます! 宜しくお願い致します!」」

改めてふたりで、遥と海斗君へお礼を告げた。

4人全員が気持ち良くなったところで、話が更に盛り上がった。
週末のデートの事も含め、いろいろ相談。

結果、ハンバーガーショップにおける作戦会議は大成功となったのである。