遥との電話が終わり……
今度はスマホから、教えて貰ったばかりの颯真君のスマホの番号へかけた。

ぷるるるるるる……
ぷるるるるるる……
ぷるるるるるる……がちゃ。

呼び出し音が3回鳴り、颯真君が出た。

登録してあるから、ディスプレイに私の名前が出たのだろう。

「おう! 凛ちゃんか」

「うん、私。……こんばんは。今、話しても大丈夫かな?」

「ああ、全然、大丈夫だ……凛ちゃん、気配りしてくれるんだな」

「え? 気配り?」

「ああ、A市で暮らしていた時、俺の友達なんてさ。電話を受けた俺がスマホの向こうで何をしていようがおかまいなしさ。相手の都合も何も聞かずに、ず~っと一方的にしゃべりまくるんだ」

「……そうなんだ」

「ああ、だから相手の状況を考えて、気配りしている凛ちゃんは偉いよ」

「ううん、当然というか。ささいな事だから」

「その当然とか、ささいな事が、なかなか出来ない奴が多いんだよ」

「出来ない、そっかあ……」

そんなこんなで、少し雑談。

頃合いと見て、私は本題に入る。

まずは改めてお礼を言う。

10年前に言えなかったから、何か、トラウマ?

「颯真君、帰ってから、もう一度言おうと思ってたの。今日は本当にありがとう」

「いやいや、こちらこそだよ」

「でね、早速だけど、私たち付き合う事になったでしょ」

「ああ、そうだな」

「でも、付き合うにあたって、いろいろなハードルがあると思うし、颯真君と相談して、解決したい」

私がそう言うと、颯真君も思いをめぐらしているみたい。

「ハードルね。……そうかあ、そうだよなあ」

そして、心当たりがあると納得してくれた。

話を進めよう。

「でね、私の方は一応解決した。多分大丈夫だと思う」

「解決? 多分大丈夫って何?」

「さっき遥からね、電話がかかって来て話したの」

遥から電話が、というのは、彼女の気配り。

お母さんへの相談同様、「私から、親友にあらいざらい話したわ」
というイメージは、避けるべき!
という良きアドバイスを貰ったのだ。

「おお、遥ちゃんとか? 彼女、昼間、凛ちゃんといっしょに、早退した俺を捜してくれたんだよな。ありがたいな、友だちって」

ああ、颯真君、(おぼ)えていてくれた!
すっごく嬉しいかも!

ここぞとばかりに、私は遥をアピール。

颯真君と遥も、私を通じて、友だち付き合いする事になるんだものね。

そして多分、颯真君と海斗君も友達になるだろうし。

「そう! 遥は小さい頃からの私の親友で大好きなの。今日の事で、颯真君にも分かっただろうけど、凄く面倒見の良い子だよ。それでね、遥が彼氏の海斗君へ頼んでくれたの」

「遥ちゃんが? 海斗君へ頼んだ?」

「ええ、例の相原さん、海斗君と同じ陸上部じゃない。だから海斗君がすぐ説得してくれたのよ。相原さん、もう私へ二度とアプローチしないと約束してくれたわ」

「凜ちゃんへ二度とアプローチしない? 相原が? え~! す、凄いな!」

「うん、遥は勿論、海斗君にも大感謝ね」

「ああ、本当だな。俺もちゃんとお礼を言いたいよ! 遥ちゃんにも海斗君にも! それと、相原って、結構いい奴だったんだな」

「うん、一緒に遥たちへお礼を言おう。でも、万が一だけど、相原さんは心変わりする可能性もあるよ……私は説得の現場に居なかったし、何とも言えないから」

「おう! ま、まあ、確かに、しばらくは用心だな……」

「……という事で、私の方は一応、解決」

「だな!」

「次は、颯真君の番よ」

「俺の番?」

「うん! クラスにいっぱい居る、颯真君ファンの取り巻き女子を何とかしないと、彼女の私が、ひどく恨まれるし、下手をすれば面倒なトラブルになりそうだよ」

「う~ん、確かに。トラブルなりそうか……それは困ったな」

悩む颯真君。

よし!
ここで切り出そう!

「でもね、颯真君、良い方法があるよ」

「え? 良い方法?」

「うん、さっき遥から電話があったって言ったでしょ。彼女、私と一緒に颯真君を捜したし、話の流れで報告した時、颯真君と付き合う事になったって話したの」

「ああ、そうか! まあ、話の流れなら、そうなるだろうな」

遥に話した事を、颯真君は納得してくれた。

よし! 話を進めよう。

「でね、遥は同じクラスで、今の状況が分かっているでしょ?」

「ああ、分かりすぎているくらいだろう」

「でしょ? だからね、私たちが付き合っても、クラスで上手く行くよう、海斗君と一緒に協力してくれるって、遥からアイディアを提案して貰ったの」

私がそう言うと、颯真君は驚く。

「えええ? 遥ちゃんがアイディアを? 海斗君と一緒に協力してくれる? そこまでしてくれるのか? でも申し訳ないなあ……」

「任せて、お安い御用って、言われたわ」

「そうか! ありがたいな!」

「まあ、上手く行くか、どうか……相手がある話だから、遥からは、一切、確約は出来ないよとは言われたけど……」

「いやいや、俺は名案がすぐ浮かばないし、ここは、せっかくの好意を受けようぜ」

「分かった、ありがとう!」

「ああ! とりあえず遥ちゃんの提案を聞いてから考えよう。それで上手く行っても行かなくても、お礼をしようぜ。俺と凛ちゃんでさ。俺達の為に一生懸命考えてくれたんだし」

上手く行っても行かなくても、お礼をしようぜって。
やっぱり、颯真君は誠実で義理堅いな。

はああ……話が上手く進んで、よ、良かったあ!

「だよね。それで、颯真君。遥のアイディアなんだけど……」

「お、おう、話してくれないか」

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私と颯真君はいろいろ話し、相談した。

颯真君からもいろいろと意見が出て、私も考えと覚悟を伝えた。

結果……
颯真君は納得し、基本的に遥の提案をOKしてくれた。

話が終わり、電話を切ると、時間はまだ午後8時30分過ぎ、
私の価値観だけど、電話をかけられる許容範囲内の時刻だった。

なので、私はすぐ、遥へ電話を入れたのである。