芸能人オーラに圧倒されて緊張したまま口を開いた。



「はっ……初めまして! 早川結菜と申します。今日からここの家政婦としてお世話に……」
「どうして早川がここにいんの?」

「えっ……」



知り合い口調に驚いて下げかけていた頭を上げた。
だが、サングラスが邪魔して奥の瞳は見えない。



「林さん、もしかして新しい家政婦ってこいつ?」

「同級生を家政婦として雇うのは気が引けましたが、該当者が彼女しかいなくて……」



なっ、なにぃ〜〜?!
話が勝手に進んでるけど、もしかして高杉悟は私の事を知ってるの?
しかも、同級生って何の事かな。
高杉悟に会ったのは今日が初めてなんだけど……。

会話についていけずに混乱していると、彼は私に言った。



「あのさ……。もしかして俺が誰だか気付いてない?」

「……私達、知り合いでしたっけ?」


「知り合いも何も、春から同じクラスだけど」

「えぇっ!! 私のクラスに高杉くんはいません。何かの勘違いじゃないですか?」


「ぷっ……。まだ気づいてねぇし」



正しい事を言ってるのに何故か笑われる始末。
クラスの男子の顔を脳内サーチしても誰1人ヒットしない。
それ以前に金髪の男子なんてクラスにいないし。

彼は少し屈んでミカちゃんを床に下ろすと、ポケットに入っていたマスクを装着した。



「これで誰だかわかる?」

「わかりません」



首を振りつつも、サングラスにマスク姿と、記憶の中の何かがぼんやりと重なってきている。



「毎日マスク姿で登校してるのにわからないか」

「えっ、毎日マスク姿?」



この時点でクラスメイトの中の該当者が1人に絞られたけど、その人は黒髪で黒縁メガネでマスク姿。
しかも、私と同じで他の生徒と一線を引いてる隠キャの阿久津くん。
派手な風貌の高杉悟とは真逆のタイプだから、私の予想はハズレている。