「氷牙？」
花音が覗き込んでくる。
無意識に落としていたため息を笑って、どうした？と聞けば、花音が言いにくそうに俯いた。
「あのね、花音、彼と別れようかなって思ってるの。それでこれからは氷牙一筋でいこうかなって」
ぴた、と足を止める。
不穏な予感がした。
「どういうことだ？」
「え？」
「べつに彼氏との関係は好きにすればいい。俺を理由にするなよ。言っとくが、俺は他にも何人もと遊んでるからな」
「そ、そんなこと言わないでさ、氷牙もこの際に花音ひとりにしてみない？ 結構氷牙のこと気に入ってるの。楽しいし、みんなに花音だけの彼だって自慢したいし」
嫌な方に転がり続ける言葉。
花音だけの、だなんて、さすがに身震いがして腕を払った。
