人質になります!と意気込んだものの、これって全然人質の扱いじゃないですよね?


 たとえば結婚式のような特殊なケースでもない限り、誰がどんなシーンで身に付けるか分からないで、アクセサリーをデザインして作ってきた。

 具体的なドレスに合わせてアクセサリーをデザインするのはこれが初めてだったものの、私は夢中になって描いた。つなぎ服に着替えるのも忘れて、ドレスのままで。


 筆を置いたとき、それまでそっとしておいてくれたイヴリンさんが近くまで来て、デザイン画をしげしげと眺めた。

「リリー様は、絵がとてもお上手なのですね。それに素敵なデザインです。こんなアクセサリーが実際にあったらいいですね」

 イヴリンさんは褒めたつもりのはず。

 そうと分かっていても、私は自分の身体の中の熱が急激に冷めていくのを感じた。

 そう、実際には存在ないし、これから先もこれを作れる日は来ないんだ。

「ただの落書きです」

 私はデザイン画を1枚残らずゴミ箱に放った。