不意打ちに、私の心臓はまたドキドキしてしまう。
「僕、歩くの速くないですか? 大丈夫ですか?」
何度も振り返るので、心臓に悪い。
私は、さっきからコクコク頷いているだけだ。
「少し遠回りをしながら行きますね」
ウィリアム様は、城の中を案内してくれた。
謁見の間も『今は使用していないから』と覗かせてくれた。吹き抜け構造になっていて天井が高く、装飾を見上げていたら首が痛くなってしまった。
それから食堂に、書庫、談話室、楽器を演奏するための専用部屋……
廊下を歩いていたとき、ウィリアム様はふと立ち止まって中庭を指差した。
「明日の朝、中庭を一緒に散歩しませんか? 実はリリーさんにお願いしたいことがあるんです」
「お願い……」
「全然難しいことではないですよ」
ウィリアム様の瞳が優しくて、私はやっぱり頷くことしかできなかった。
この笑顔を向けられて断るとか無理でしょ。できるはずがない。



