お父さんとポールさんは、どの町へ入ってもそこの名物料理に詳しかった。
「リリー、このミートパイは絶対に食べておかないと損だ」
「リリーさん、こっちの菓子パンは若い女の子の間でめちゃくちゃ流行ってるらしいですよ」
『もうお腹いっぱい』だと言っているのに、それでもふたりは競うように、私にあれこれ食べさせようとした。
「太っちゃう!」
「太れ、太れ。それの何が悪い」
「そうですよ。リリーさんは細いから」
「これからに備えて食べておけ」
「えっ、それってどうこと? 私って、王城できちんと食事を出してもらえないの?」
粗末な食事ってこと? 人質ってそういう扱いを受けるの?
改めて考えてみると、私は人質になったあと、どんな生活を送ることになるのか何も知らないんだ。
楽しかったはずの気持ちは、不安に乗っ取られてしまった。
お父さんは焦ったように説明した。



