わざと眉根を寄せてボヤくと、お父さんは妙に上機嫌になった。
「ふっふっふ……お父さんはな、ちゃーんと準備をしてきてやった!」
『どうだ!』と言わんばかりに、勝ち誇った顔でお父さんが取り出したもの……
それはそれは分厚い本だった。
揺れる馬車の中で目を凝らすと、表紙には『これで貴方も大丈夫! 基本のルールとマナー』と書いてある。
「えーっ!? 嫌だ、そんなの!」
私は思わず絶叫した。
「何言ってるんだ。これはすごく役に立つんだ」
「お父さんも読んだの?」
「当たり前だ。読んだに決まってるだろ」
「実践してる?」
「実践? 実践……はしてる……少しは」
「ほらあっ!」
私とお父さん、それからポールさんまで一斉に笑った。
ひとしきり笑い終えると、お父さんは本を差し出してきた。
「リリー、お前には本当に必要だから」
そうかもしれない。
私は渋々、本を受け取った。



