人質になります!と意気込んだものの、これって全然人質の扱いじゃないですよね?


 なるほど、と思ったところで、ポールさんが再び顔を出した。

「今、中をピカピカに掃除したところなんですよ! ちゃちゃっと掃除道具を片付けてくるんで、馬車に乗って待っててください」

 ポールさんは掃除道具を持って、建物に駆け込んだ。


 戻ってきたときには、掃除道具は旅行カバンに変わっていた。

「今回も迂回ルートでいいんですよね?」

「ああ、娘に色々見せてやりたいから」

「お父さん、どういう意味?」

「王城に最短距離で行くルートは殺風景だし、野宿になるからその分、危険も多いんだ。町と町を結ぶルートなら遠回りにはなるが安全だし、ちょっとした観光にもなる。父娘旅行だと思えばいいだろ」

「へー、面白そう」

「きっといい思い出になりますよ」

 ポールさんは純粋な笑顔でそう言ってくれた。

 まさかこれが最初で最後の……だなんて想像もしないんだろうな。

「じゃあ、さっそく出発しますよ? はっ!」

 ポールさんの掛け声とともに、ゆっくり馬車が動き出した。