「あと、これも。ジャーン!」
お母さんが上等そうなワンピースを掲げた。
「私に? どうしたの、これ?」
「お父さんに聞いたって『何着ていったって構わん』としか答えてくれないの。でもそんなはずないじゃない? だからお祖母さんと準備したのよ」
ドワーフの森に自生している花のモチーフが、胸元と腰にあしらわれている。
「わあ、すごく素敵」
「登城する日には、これを着ていって」
ああ、何だ。そういうこと……
ほんの一瞬浮遊した気持ちは、地面にのめり込みそうな勢いで落っこちた。
丁寧にたたみ直して私のバッグに詰めてくれていたお母さんは、幸いそのことには気づかなかった。
お母さんが不意に手を止めた。
「あら……そういえば、髭はどうしよう? リリー、付ける?」
「髭! そうだった……」
ドワーフは、男女問わず髭が生えている。
人はそう信じている。
しかし、それは真実ではない。
ドワーフは人に比べて背が低いため、若く(下手をすると幼く)見られやすい。
そこで、侮られたりすることのないように、成人を迎えたドワーフは付け髭を付ける風習がある。



