人質になります!と意気込んだものの、これって全然人質の扱いじゃないですよね?


 指示通り、夜中にベットを抜け出した。

 寝すごさなくてよかった。

 寝すごしたら、仲間の誰かが呼びに来てくれると思うけれど、そうしたらお父さんまで目を覚ましてしまうかもしれない。

 お父さんには明日の出発ギリギリまで安眠しててほしい。

 物音を立てないように、息をひそめて細心の注意を払いながら家を出た。

 家の外に出て『ふう』と息を吐いたとき、誰かが少し先に立っていることに気づいた。

 仄かな月明かりしかなくて黒いシルエットだったけれど、誰なのか当てるのは簡単だった。今ドワーフの村にこんな長身はひとりしかいない。

 髭を取りながら近づいた。

「眠れないんですか?」

「わっ……リリーか。うん、緊張してて」

「お父さんとお肉を焼く連携がばっちりでしたから、上手くいくに決まってます」

 『ありがとう』と微笑んでくれたけれど、その声に覇気はない。