お母さんは、少し離れた場所で肉係をしているお父さんに向かって呼びかけた。
「お父さんはこの子が産まれる前に、さっさとドラゴンを倒して帰ってきてちょうだーい!」
「ち、ちょっと、お母さん! 簡単に言いすぎ……」
「そんなことないわよ。200年前は成体の、しかも産卵前で気が立ってたドラゴンだったのに、今回は卵から帰ったばかりの雛でしょ? しかも200年前の記録まであって」
「わっはっはっ」
お父さんが大笑いした。
お父さんが、肉を乗せた皿を手にこっちにやってきた。
「だそうですよ。ウィリアム様もどーんと構えててください。ほら、リリーは肉も食べて力をつけて、明日から工房でしっかり働いてくれ!」
私が想像していたよりも、みんなはずっとずっと明るかった。
悲壮感は微塵もなかった。
それどころか、ドラゴン相手にも『やったるぜー』くらいの気概があった。
私だって、失恋でウジウジしてる場合じゃない。
明日、矢の製作チームでがんばるのみ!
私は気合いを入れるために、肉を頬張って食べた(王城にいる間は絶対にできなかったこと!)。



