人質になります!と意気込んだものの、これって全然人質の扱いじゃないですよね?


 イヴリンさんが戻ってきた。

 私の顔に気づいて目を見開いた。

 でもそれだけだった。さっそくここにひとり、髭の有無で変わらない人がいたのだ。

「さあ、お化粧をしていきますね。目を軽く閉じてください」

 何事もなかったように接してくれた。

 髭ぐらいで世界は何も変わらないじゃない。もしかして、ドワーフは髭を重要視しすぎてるんじゃないかな? 

 正直イヴリンさんには、もっとびっくりしてほしかったかも? 『お髭が……!』って。

 だから、ちょっと残念な気もしてる(仕方ない、ウィル様に期待しよう)。

 イヴリンさんが、私の顔に何かをはたくたびに、甘い香りがした。

「可愛らしいドレスの雰囲気に合わせて、口紅は薄いピンクにしますね……できました! 目を開けてください」

「わあ、イヴリンさんって魔法使いだったんですね」

「いいえ、少しばかりお化粧ができる侍女ですよ」

 イヴリンさんは真顔で訂正を入れてきた。

 でも、魔法使いだと思う!

「では、謁見の間へ参りましょう。ウィリアム様がリリー様のことをお待ちです」