だって、メリー伯母さんが人質として王城へ向かったのは、今から17年前のことだから。まだ私のお祖父さんが族長だったときのこと。
メリー伯母さんの前に人質だったドワーフが、肺炎をこじらせて亡くなったため、新たな人質を王城に預けなければならなくなったのだ。
メリー伯母さんは、次の族長になるべき自分の弟、つまり、私のお父さんを『人質にするわけにはいかないから』と、自ら人質に志願してくれたそうだ。
私が生まれる前の話にも拘らずこのエピソードをよくよく知っているのは、お父さんから折に触れて聞かされてきたから。
「国王様からは、『メリーを故郷に戻して、余生を家族とゆっくり過ごさせてやってはどうか』と打診されている……しかし、」
誰もがそのあとに続く言葉を知っていたと思う。
「新たな人質を王城に送ることと引き換えだそうだ」
ああ、やっぱり……
誰も何も言えなくて、工房は静まり返った。
パチパチッと燃える火の音だけが、やたら響いていた。



