人質になります!と意気込んだものの、これって全然人質の扱いじゃないですよね?


 誰だろう?

 イヴリンさん以外、私に会うために工房を訪れる人に心当たりがなかった。

 けれど、顔を見たらすぐに誰だか分かった。テオ様の侍女だ。

 話をしたことはないけれど、ほぼ毎朝、中庭で会っている。

「リリー様、四半刻ほどお時間を頂けないでしょうか? テオドール様が、衣装部屋まで来てほしいそうなのですが……」

 テオ様が?

 今朝はあいにくのお天気で、庭いじりはできなかった。

 私に話したいことがあるのかな?

 テオ様は朝会うと嬉々として、前日にあった出来事を話してくれる。

 それは妹たちと同じで微笑ましい。

 妹たちも工房から私が帰ってくるのを待ち構えていて、毎日のように競って話を聞かせてくれた。

 王族のテオ様に対して失敬なんだろうけど、小さな弟ができたみたいだとこっそり思っている。