(采人視点)

クリスマスの話を持ち出しているのに、まるで他人事のように聞いている夕映。
正直、もっとわくわくドキドキしててもいい時期なのに、彼女からは『恋人同士で迎える初めてのクリスマス』というイベントの熱量を感じない。

元々、恋愛にのめり込むタイプではないようだが、付き合い始めて四か月。
今が一番いい時期のはずなのに…。

あれが欲しい、これが欲しいと強請るタイプじゃない。
少し前からリサーチしているものの、欲しい物どころか、彼女の好みですら未だに分からない。

ブランド物を持ってないわけじゃない。
けれど、このブランドが好き!というほど、拘ってる様子もなく。
時計やアクセサリー類は、殆ど興味が無いようだし。
休みがあるなら、ゆっくり旅行にでも連れて行ってあげたいところだが、この季節は感染症も流行り出し、ERは何かと忙しいはず。

「采人さんは、何か欲しい物とかあるんですか?」
「俺?……夕映。夕映が欲しい」
「なっ……何、いきなり変なこと言うんですか」
「恋人なんだから、別に変なことでもないだろ」

箸で切り分けたふろふき大根を口元に運ぼうとして、ぽろりと落とした。
動揺している彼女が愛らしくて、ついつい顔が緩む。

「物でお願いします」
「……物ねぇ…」

両手を合わせて拝むように頼み込んで来る彼女。
恋愛経験は殆どないと言っていたから、過去に男に贈ったことも少ないはず。

「元彼には、何あげたの?」
「え…?」
「ペアリングや時計を買ってるイメージないから、マフラーや手袋とか負担にならない系か?」
「な……んで、分かるんですか?」

やっぱり。
束縛するタイプではないが、いつも身に着けられるものを贈って彼女アピールはしてただろうな。