トップシークレット☆ ~お嬢さま会長は新米秘書に初恋をささげる~【減筆版】

 スキニーデニムにパーカー姿の里歩は、脚が太めなことを気にしているらしい。でも、スポーツのセンスがまるでないわたしは彼女の筋肉質な脚がカッコいいと思う。

「だいたいさぁ、ボウリングにロングスカートで来るってどうよ」

「それは別にいいじゃない」

 里歩の指摘に、わたしは口を尖らせた。


 ――二ゲームほど遊んだら、体力に自信のある里歩はともかくわたしはもうすっかりヘトヘトになってしまった。

「…………疲れたね。もう終わろっか」

「うん。里歩、ありがとね」

 わたしから「もう終わろう」と言う前に、里歩の方から言ってくれた。

「――ところでさ、どうして桐島さんが昨日のタイミングでキスしたか、なんだけど」

「うん……。彼、ああいうことしそうな人じゃないと思ってたのになぁ」

 休憩しに入った駅ビルのカフェで、アイスラテを飲みながらわたしは頬杖をついてそうこぼした。店内は暖房が効いていたので、冷たい飲み物でちょうどよかった。

「あたしが思うに、それって彼がアンタの気持ちを知ったからなんじゃないかな?」

「あー……。そういえば昨日、そんなこと言ってたような気が……。パニクってて頭に入ってこなかったけど」

 彼は気づいていたのだ。わたしからのチョコが本命=わたしが自分を好きなんだということに。

「だってさ、こないだCM出演のオファーが来た時にアンタ言ったんでしょ? 『ファーストキスは絶対、好きな人としたい』って。彼もそれ憶えてたんだよ。で、それが自分なんだって気づいたんじゃないかな」

 わたしと同じものを、ガムシロップ少なめで飲む彼女はわたしと同い年なのに少しだけ大人に見えた。

「…………うん、確かに言ったけど。あれじゃあんまりにも急展開すぎるよ。理解が追いつかないってば」

「でも、キスだけで済んだと思えばさ。桐島さんはまだ紳士的な方だと思うよ。ヘタすりゃ押し倒されてたかもしれないんだから」

「おし……、えっ!?」

 あまりにも生々しい言葉が出てきて、わたしはギョッとなった。

「世の中には、そういう男もいるってこと。アンタ、小坂リョウジに口説かれかかったらしいじゃん。危なかったよね。桐島さんがついててくれなかったら、確実にそうなってたよ」

「うん……。ホント、彼には感謝しかないわ」

 確かに、あんな人に無理やりモノにされるくらいなら、貢にキスされたくらいはまだ可愛らしいのかもしれない。

「――あ、そういえば知ってる? あのCM、早くもネットで騒がれてるんだよ。これこれ」

 里歩は自分のスマホでニュースサイトを開き、テーブルの上に置いた。わたしが覗き込んだその画面に表示されていたのは――。

「『〈Sコスメティックス〉新作口紅CM、小坂リョウジと共演の謎の美女は誰だ!?』? ……ウソ、こんなに話題になっちゃってるの?」

 あのCMはすでに放映されていて、反響がすごいのだと〈Sコスメティックス〉の広報部の人たちから喜びの連絡が来ていたけれど。わたしはSNSをやっていなかったので、ここまで騒がれていたのは知らなかった。