「初めはみんなも、見習い錬成師が手がけた武器なんか使い物にならないって見向きもしてなかったんだよ。傷薬の時もよく思わない人たちが多くて、クリム君の作った品じゃなきゃ受け付けないってね。でも、少しずつその認識も変わってきた」

 ムースさんは私が手がけた黒石の直剣を見つめながら、笑みを浮かべて続けた。

「今じゃ、一部の騎士たちはすっかりショコラちゃんのファンになっててね、早く別の品を見てみたいって言ってるんだよ。俺もそのうちの一人だしね」

「そ、そうなんですか……」

「それに今回作ってくれた剣なんか、特に面倒くさがりな俺にぴったりの武器だからね。これからもこういう便利な品を期待してるよ」

 みんなが、私の作ったものを見てみたいって言っている……
 それは錬成師冥利に尽きるというものだ。
 今まではブラックなアトリエで素材採取係としてしか活動していなかったし、こうして錬成師として認めてもらえるのは素直に嬉しい。
 ちなみに私の作った剣の中には、『炎属性付与(S)』で斬撃に火炎をまとわせるものや、『筋力強化付与(S)』で装備者の筋力を上昇させるものもできた。
 それらの特殊な性質を付与された剣も、騎士団内で話題になったそう。
 ただ、そんな感じで性能にかなりのバラつきがあるから、騎士団全体での採用は見送られるそうだ。
 あくまで王様を守る『近衛師団』と、町を守る『守衛師団』で使ってもらえるらしい。
 一方で魔物討伐を主眼とする『討伐師団』と、魔物領域開拓を目的とする『開拓師団』の武器は、引き続きクリムが担当することになった。

 やはり安定感と信頼性を考えるとクリムの作った剣の方がいいということらしい。
 訓練で剣を使用する際も、性能にバラつきがあったら意味がないし。
 それでも充分にクリムの仕事量を削減させることはできているみたいで、クリムはやりたがっていた錬成術の研究に僅かながら時間を割けるようになっていた。
 今も自分の作業机の方で、私とムースさんが話していることなんか気付いていないように研究に没頭しているし。
 こうしてアトリエで修行させてもらっている身だから、少しでも役に立てているみたいで本当によかった。

「じゃあ引き続き、傷薬と武器の錬成、よろしく頼むよ」

「はい、わかりました」

 というわけで私は、クリムのアトリエの手伝いとして少しだけ前進したのだった。
 さて自分の作業机に戻って錬成作業を再開しようかな、と思っていると……

「あっ、そういえばショコラちゃん」

「……はいっ?」

 アトリエから立ち去ろうとしていたムースさんが、不意に足を止めてこちらを振り向いた。

「町の冒険者たちから、武器錬成の依頼が届いてるよ」

「えっ?」

 唐突にそんな話を持ちかけられて、私はぽかんと口を開けた。