家に絵本はあったらしい。

生まれてくる男の子のために用意されたもの。

それを、親が仕事に行っている間にこっそり読んでいた。

親たちは男の子のために用意されたものを見返したりはしない。

思い出したくもないのだろう。


その絵本を読んでいたおかげで、簡単な漢字とひらがなカタカナは読める。

話ができたのも密かに自分で練習したり、外の話し声などを聞いていたおかげ。


なので、今までできなかった勉強をするということが大好きな桃子。
  

それなのに、いつもなら集中してじっとしているのだが、今日はキョロキョロしてあまり落ち着きがない様子。


「何かあったの?」


白洲は心配になって聞くが、桃子はなんでもないという。