「でも、あなたを房に送り届けるのも私の仕事…」




 だから、と言うまえに、雷牙の顔が迫ってくる。

 息を飲んでぎゅっと目をつむると、顔のすぐまえで息遣いを感じた。




「このまま、キスされたくはねぇだろ?やさしく言ってるうちに、大人しく行きな」


「っ…で、でも…」


「…まじめだな」




 雷牙は笑って、私の耳元に口を寄せる。

 吹きこまれたのは、あの声だった。




「――命令だ。…行け」


「う、ん…」




 本能が、従わなきゃ、と言う。

 考えるひまもなく肯定の返事が口からもれると、雷牙は私の頭をぽんぽんとなでた。

 心臓の音が、どくどくと聞こえる。


 …ほんと、あやつられてるみたい。

 そう思いながらも、私の足は刑務所棟の外れにある、あの倉庫へと向かっていた。