もうっ!


 私は顔を上げて、雷牙の頬を両手ではさんだ。




「あなたとあそんでるひまはないのっ、教えて、雷牙!」


「…上等。ごほうびをやんねぇとな」




 雷牙は笑って私の手を外すと、ちゅっと、口のよこにキスをする。




「ちょっとっ!」


「追われたネズミはすみにかくれる…あの倉庫、かくれ場所としてなかなかゆうしゅうだと思うぞ?」


「倉庫…?」




 オウム返しにしてから、クモがいたあの倉庫…!と思い出した。




「10分程度のゆうよで脱獄まではできない。さわぎが収まるまで、どっかにかくれてるほうが賢明だ」


「わかった、ありがとう!雷牙もはやく房にもどって、送っていくから!」


「1人で帰る。看守さまは脱走者を捕まえてきな」