藤枝(ふじえだ)さん、大丈夫?」


「あ、先輩…」




 108番と私のあいだに入って、かばうように立ちながら聞いてきたのは、いつぞやに食事の約束をした女性の先輩。




「女の敵ね…ちょうばつ房へ!」


「1人でこんなとこにいるほうがわりぃって。あー、はいはい、ちゃんと歩くからそんなに押すなよ」




 108番1人が連行される姿をながめながら、ぽかんとして状況をかみくだく。

 え、っと。

 つまり、私は…かばわれた、ってこと?


 今回、108番は私を助けてくれただけなのに…。


 ちょうばつ房行きになった108番の姿が見えなくなると、私の胸はちくりといたんだ。

 なんだか、もうしわけない。


 …や、そういえばあの男、また脱走してたんだった。

 自業自得か。



 そう思い直して、私はおそるおそるふり返り、倉庫の掃除に戻った。