世界でいちばんこわい、生理的にむりなアレがいる痕跡を見落とさないように、部屋のすみずみまで目を光らせる。


 そうして私は見つけてしまった。

 床に置かれた段ボール箱と段ボール箱のすきまに、あの白い糸が張られているのを…!




「いたぁぁぁ~…っ」




 泣きたい気持ちであとずさって、ほうきの()を握りしめる。

 正直、間接的にでもあれにさわるのはやだ。

 でも巣をこわせば、退散する確率がたかいし…。


 ごくりとつばを飲んで、私はおそるおそる、ほうきの先をあの白い糸に伸ばした。




「ようやく見つけたぜ」




 うしろからとつぜん聞こえたのは、聞き覚えがある声。

 はたとうごきを止めると、鎖骨の下に腕が回された。




「けーい。俺、おまえに惚れた。落とすから覚悟しとけ」




 ぎゅっ、と抱き寄せられて、耳にぞくっとする声が吹きこまれる。