藤枝(ふじえだ)景依(けい)視点―


 半袖の制服に着替えるようになった、6月の第2週。

 いろんな経験を積めるように、と各仕事を転々とふり分けられる監獄学園の慣習によって、私はいま…。

 刑務所棟の外れのほうにある、倉庫の掃除を任されていた。




「うっ…こういうとこは、“出る”んだよね…」




 倉庫の扉を開けたときの、もわっとした埃っぽい空気に、まずいやな予感がした。

 窓から日差しが入ってきていないせいでなかはうす暗くて、いかにも使われていない場所、という様相をしている。

 私はアレを警戒しながら、おそるおそる倉庫のなかに入った。


 万が一アレがいたときのために、扉を開けたまま。




「いませんように…いませんように…!」