ふり返ってするどく私を見下ろす視線に、きっ、と強い意志を返す。

 このひともまた、性根のくさった男だ。




「ひかえろ、藤枝」


「ですが、先輩…!」


「二度も言わせるな。…それは、俺が言うべきことだ」


「!」




 財前先輩を見ると、冷ややかな紫色の瞳は、おえらいさんに向けられていた。

 中年男の眉根が寄る。




「法務省にあなたのような誤った思想を持つ方がいたとは、嘆かわしいことですね。父に人員を見直すよう提言したほうがよさそうです」


「誤っているのはこの国の法律だ、私は現場から変えようと…」


「必要ありません。我が学園は法の(もと)で運営いたします。…どうぞ、お帰りください」