ひやひやしながらようすを見ていると、おえらいさんは108番の作業場に近づいた。




財前(ざいぜん)先輩…!」


「…」




 小声で呼びかけると、財前先輩は私を横目に見ただけで、すぐに視線をまえへもどしてしまう。

 財前先輩のことだから、わるいことは考えてないと思うけど…!

 あのひとがまた体罰したらどうするの!?


 ごくりとつばを飲んでおえらいさんの背中を見つめると、スーツに包まれた腕は作業台へと伸びて。

 カシャン、と作業台に乗っていた物を払い落とした。




「あ?」


「拾いなさい」




 なに言ってるの、あのひとは…!

 今度はいやがらせ!?


 108番はいつものへらへらした表情をしまって、受刑者らしい、ガラのわるい顔をする。

 つり目が最大限に活かされたするどい目つきなんて、私も思わずぞくっとしてしまったほど…。