「72番!」
私はとっさに72番へ駆け寄って、叩かれていた手の甲にふれる。
「気にせず」と彼にだけ聞こえるようにささやくと、声量をもどして言う。
「作業を再開しなさい」
「せんせー…はーい」
眉を下げて、ふたたび手をうごかし始めた72番を、ほっとしながら見つめる。
他のVerbrechen生がこっちを見ていることに気づくと、「あなたたちも」と注意した。
「ふむ…仕事はできるようだな」
おえらいさんが私を見下ろしながら言う。
…冷静に、冷静に…怒っちゃダメだよ、私…。
「次の工場へ案内いたします。どうぞ、こちらへ」
「ふむ」
財前先輩がうながしたことで、おえらいさんは移動を始める。
私は財前先輩のうしろにもどって、こっそり深呼吸をした。