すぐに駆け寄って、108番の腕を背中側でひねり上げると、「あー、ギブギブ」とやる気のない声がする。

 腕を拘束したまま、背中を押さえて前かがみにさせてから、私は一旦深呼吸をして。




「ここをどこだと思っているんですか!受刑者は自由に出歩ける立場じゃないんですよ!」


「いいじゃねぇか、一生出られねぇんだし。家のなかを散歩するのは自由だろ?」


「刑務所は家じゃありません!」




 なに、この男。脱走をくわだてたわりに見つかっても冷静だし!

 こっちの調子が狂うんだけど!?




「そもそもどうやって抜け出して…!」


「一緒に作業してたやつのようすがおかしいから、医務室に連れてったんだよ。いまはその帰りに、散歩してただけ」


「はぁっ?いったいだれがそんなことを許して…!ううんっ、それよりも、ちゃんと医務官を呼んだんですか!?」


「あー、適当に寝かせてきただけだけど?」