なにがあったんだろう、と考えながら、私は呼びにきた生徒と一緒に木工工場へと向かった。




「やめてください!」


「なんだよ、逃げるなよ!ほら、ほら!」


「止まれ、ちょうばつ房に入れるぞ!」




 木工工場のなかでは、エプロンをつけた長身の男が木材をふり回していた。

 兎杏を含めたGebot(ゲボート)生が周りで止めようとしているけど、男は執拗(しつよう)に逃げ回るVerbrechen(フェアブレッヒェン)生を攻撃していて、止まる気配がまるでない。

 …あぁ、私が呼ばれた理由がわかった。


 私は息を吸いこんで、だれよりもおおきな声で叫ぶ。




「72番、止まりなさい!」


「!」


景依(けい)ちゃん…!」




 しん、と静かになった工場のなかで、ぴたりとうごきを止めた長身の男は、ゆっくりふり返って私を見ると。




「せんせ~!」