兎杏が口にした文言とそっくりおなじものを頭に浮かべていた私は、横目に兎杏を見た。

 胸のまえで両手を握った兎杏は、目をつむって「こわかった」とつぶやく。




「ここの県内だから、もしかしてってうわさはされてたけど…本当に犯人が入ってくるなんて」


「…だね。大丈夫だよ、兎杏は私が守ってあげるからっ」


「わっ!」




 重くなった空気を払拭するように、兎杏にぎゅーっと抱きつくと、兎杏はうしろにたおれた。

 そのまま私も一緒にたおれて、「あははっ」と笑う。




「景依ちゃん…ふふっ。たのもしいな」


「かんたんにやられたりしないから。任せて」




 よこになったまま兎杏を見つめてにこっと笑うと、兎杏もふにゃりと笑い返してくれた。


 …あれから、体術にもみがきをかけたもん。

 だれにも負けたりしない、ぜったいに。